デンケン

エレクトロニクス事業部

量産前の不具合を救う「FIB回路修正」── 開封から解析まで一貫対応

半導体開発の過程においては、量産前の確認段階で「この設計で本当に大丈夫だろうか」と不安になる技術者が多いことと思います。
というのもウエハーの製造には1枚あたり数百万円のコストと数ヶ月の期間がかかるため、不具合が見つかってから作り直すのでは
コストも時間も膨大になるからです。
そこで、量産前の設計検証で活用されている技術が「FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)回路修正」です。
ICチップの回路をサブミクロン単位で切断・再接続して設計変更の効果を事前に確認するこの技術は、半導体メーカーや設計会社の
開発現場で広く活用されています。
今回は、株式会社デンケン エレクトロニクス事業部 評価解析部でFIB回路修正を担当する國廣紗央氏と東英志氏への取材をもとに、
FIB回路修正の仕組みと活用シーン、デンケンならではの強みについて詳しくレポートします。


【この記事でわかること】
・FIB回路修正とはどのような技術か
・回路修正が必要になる2つのケース
・サブミクロンの多層構造で回路を「切る・繋ぐ」仕事
・デンケンの強み:開封から回路修正、解析まで一貫対応


ICチップの回路を「切る・繋ぐ」FIB回路修正

FIB回路修正とは、製造されたICチップ内部の回路配線を、FIB(集束イオンビーム)装置を使って切断したり、
別の回路に繋ぎ直したりする技術です。

「ICチップの中に作られた回路を修正して、事前評価用のチップを作るのが私たちの仕事です」と教えてくれたのは、
評価解析部で回路修正を担当する東氏。
ICチップに形成された微細な回路の一部を切断したり新たに接続したりすることで、回路構成を変更した状態での動作確認が
できるようにしています。
FIB回路修正はウエハーを新たに製造することなく回路の変更を試すことができるため、主に半導体の設計評価段階で、開発コストと
時間の大幅な削減につながる評価手法として活用されています。

FIB回路修正 2つの活用シーン

FIB回路修正のご依頼元は、主に半導体メーカー、・半導体商社、・ファブレスメーカーなど、ICを設計・製造する企業が中心です。
評価解析部の國廣氏によると、回路修正をご依頼いただくケースは大きく2つに分かれるといいます。

発生した不具合のレスキュー ── 試作段階での設計修正

1つ目のケースは、試作したICチップに想定外の動作が見つかった場合です。
半導体の開発では、設計した回路を実際に動作をさせ確認します。ところが動かしてみると「想定通りに動作しない」
「ここの設計に問題があるのではないか」というような事象が発生することがあります。
ただ、不具合が見つかるたびにウエハーを作り直していてはコストも時間も膨大になるため、既存のチップにFIBで回路修正を施し、
動作確認をしてウェハーの量産製作に進む、という形のご依頼も一定数あるそうです。
「設計通りに作ったものの、想定通りに動かなかったような場合や、ウエハーのマスクを作る前にちょっと調整する必要がある
ケースなどでご依頼いただくことが多いと思います」(國廣氏)

製品アップデートのための事前検証

2つ目は、既存製品の性能向上を目的とした回路変更の検証です。
「ここをこうしたらもう少し動作が速くなるのではないか」というような改良案について、実際のICチップに回路修正を施して、
その成果を事前確認するケースがこれに当たります。
いずれの場合も、高額なウエハー製造に進む前に回路の動作を検証できる点が、FIB回路修正の大きなメリットとなっています。

設計データの受領から修正・納品までの作業フロー

では、FIB回路修正の作業の流れを見てみましょう。

1. 設計データと作業指示のお預かり
はじめにお客様から回路の設計データ(GDSデータ)をお預かりして、「どの配線を切断するか」「どことどこを繋ぐか」といった作業箇所と作業内容について指示をいただきます。

2. 見積・受注
作業内容を確認のうえ、見積書を提出します。

3. サンプルの受領と開封
ご依頼を頂く場合、お客様からICチップのサンプルを送っていただきます。パッケージングされ、モールド樹脂で覆われている場合は、開封作業を行って内部のチップを取り出します。

4. FIB装置による回路修正
FIB回路修正装置を使い、指示通りに配線の切断や再接続を行います。

5. 検証・納品
修正後の確認や画像・レポートの作成を経て、お客様にサンプルを納品します。
「基本的にお客様から『ここを繋いでください』『ここを切ってください』という指示をいただいた上で、その通りに作業を進めます。
回路のデータと実際のチップの回路を見比べながら、逐一注意して加工するようにしています」(東氏)


イオンビームとガスの組み合わせで配線の切断・接続を行うFIB装置


サブミクロンの多層構造で配線を「切る・繋ぐ」精密加工

FIB回路修正の技術的な難しさは、加工対象の微細さにあります。
ICチップのサイズは0.5mm角程度の小さなものから1cm角程度のものまでさまざまですが、その内部に形成された回路の配線幅はサブミクロン(1マイクロメートル以下)の世界です。
デンケンでは最小40ナノメートル程度の配線幅まで対応した実績があります。
さらに半導体チップの回路は平面ではなく、ミルフィーユのような複数の層で構成されています。
上の層から下の層まで、さまざまな層に配線が走っており、例えば2層目の回路と4層目の回路を縦方向に繋ぐというような、難しい作業も発生することがあります。
FIB回路修正の難しさについて伺うと「膜厚が厚いサンプルでは下の回路が見づらく、加工しにくいこともあります。そういうときは、配線が見えるように加工サイズを大きめにして、
ある程度のところまで広く削ってから細かい加工に入るなど、前処理を丁寧に行っています」と教えてくれました。
お客様のサンプルが1個しかない場合には、文字通り一発勝負です。「細かい箇所を加工すると、想定外のところがつながってしまうなど予期しないことが起こることもあります。
回路のデータと実際の回路を見比べながら、この加工が他に影響を出さないよう丁寧な仕事を心がけています」(東氏)


回路修正作業中の東氏

プロービングPAD作製で回路の電気特性を直接測定

また、デンケンのFIB回路修正では、配線の切断や再接続に加えて「プロービングPAD(パッド)作製」にも対応しています。

プロービングPADとは、回路の特性を直接測定するためのプローブ(測定針)を接触させる金属電極のことです。
例えば「この配線は1V出ているはずが5V出ている。なぜだろう?」といった場合に、プロービングPADを作製して直接電気特性を測定し、不具合の原因特定に役立てることもあるそうです。

開封から回路修正・解析まで一貫対応するデンケンの強み


パッケージ開封から回路修正、解析までワンストップで対応

デンケン最大の強みは、パッケージ開封からFIB回路修正、さらに修正後の回路解析まで一貫したサービスで対応できることです。
パッケージの開封作業は高度な技術と周辺環境の条件が必要で、対応できる企業は限られています。
その点デンケンでは同じ拠点内に開封・回路修正・解析までの設備と技術が集約されているため「修正後に回路が正しく
動作しているか」まで確認できるワンストップ体制はお客様にとって大きなメリットです。
「回路修正だけでなく、修正前の開封作業、修正後の回路の解析までできる設備があるのが当社の強みです。
お客様はパッケージの状態で預けていただくだけで、開封から修正、解析まで一貫して対応できます」(國廣氏)

メーカー系列に属さない独立系企業の柔軟さ

そしてデンケンは、メーカー系列に属さない独立系の半導体関連企業です。特定のメーカーとの関係を持たないため、半導体メーカー、半導体商社、ファブレスメーカーなど、
ICの設計・製造に関わるさまざまなお客様からの依頼をフラットに受けられる環境にあります。
また、半導体の開発工程で不具合が発生した場合の打合せや作業確認については、オンラインでも立会でも対応可能なので、状況にあわせた柔軟な対応も依頼のしやすさにつながっています。

まとめ:量産前の回路修正・検証はデンケンへ


この記事では、半導体ICチップの回路をFIB(集束イオンビーム)で切断・再接続するFIB回路修正技術について、その仕組みと
活用シーン、デンケンならではの強みを紹介しました。

[デンケンのFIB回路修正サービスの特長]
・ICチップの回路を切断・再接続し、ウエハー製造前に設計変更の効果を検証
・最小40ナノメートルからの微細配線にも対応する高度な加工技術
・パッケージ開封から回路修正、修正後の解析まで、同一拠点内で一貫対応
・独立系企業としての柔軟な対応力

ウエハーの量産前の設計検証や、試作段階で発見された不具合への対応など、FIB回路修正は
半導体の開発コストと時間を大幅に削減できる技術です。
FIB回路修正に関するご相談は、デンケン エレクトロニクス事業部までお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ先 株式会社デンケン エレクトロニクス事業部
お問い合わせフォームよりご連絡ください


取材協力
株式会社デンケン
エレクトロニクス事業部 評価解析部 評価技術課 國廣 紗央 氏(左)
エレクトロニクス事業部 評価解析部 評価技術課 東 英志 氏(右)

 

この記事を書いた人
ものづくりライター 新開 潤子
製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。
https://office-kiitos.biz/
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