ワイヤーボンドからフリップチップ、その先へ-デンケンが目指す先端パッケージ技術の拠点
半導体パッケージ技術は昨今、めざましい進化を続けています。半導体パッケージ製造の後工程の実装工程において、従来主流だったワイヤーボンド方式からフリップチップ方式への移行が進む中、
AI半導体やIoT機器向けの高密度実装技術として「FCBGA(フリップチップボールグリッドアレー)」への注目が高まっています。
FCBGA(Flip Chip-Ball Grid Array)は、LSIチップの高速化と多機能化を可能にする高密度半導体パッケージ基板技術です。
従来のワイヤーボンド方式がチップの周辺部分のみで金線による配線接続を行うのに対し、フリップチップ方式はチップを反転させて基板に直接接続するため、
限られたスペースに最大限の機能を詰め込むことができます。また、接続距離が短いため信号の遅延や損失が少なく高速動作が求められる先端アプリケーションでの採用が進んでいます。
株式会社デンケンのエレクトロニクス事業部では、ウエハーからチップを切り出して電子部品の形にする後工程を担っています。
同事業部では従来のワイヤーボンド実装に加えて、このFCBGA製造技術にいち早く対応し、現在はさらなる技術向上に向けて設備投資も計画しています。
今回は、同事業部の保木氏と三ヶ尻氏への取材をもとに、FCBGA技術の特徴からデンケンの優位性、そして今後目指す形までを詳しく解説します。
【この記事でわかること】
・FCBGA技術の基礎知識とワイヤーボンドからの技術進化
・フリップチップ実装の3つの技術的優位性
・先端パッケージ技術への対応に向けた設備投資計画
・FCBGA技術の基礎知識とワイヤーボンドからの技術進化
・フリップチップ実装の3つの技術的優位性
・先端パッケージ技術への対応に向けた設備投資計画
ワイヤーボンドの課題とフリップチップによる解決
ワイヤーボンドからフリップチップへの技術進化
半導体パッケージの実装工程は、これまで「ワイヤーボンド方式」が主流でした。ワイヤーボンド方式は、チップの周辺部分に配置された端子を金線で基板に接続する実装技術で、大量生産に適しており多くの製造ラインで標準的に使用されてきました。
しかし近年、この方式には2つの大きな課題が浮上してきました。
ひとつ目は材料費の高騰です。
ワイヤーボンドで使用する金線の価格が過去10年間で約2倍に上昇しており、供給制約や新興国の需要増加、
主要金鉱山の採掘コスト上昇により、今後も持続的な価格上昇が見込まれています。
二つ目はスペース効率の悪さです。ワイヤーボンド方式ではチップの周辺部分にしか配線を配置できないため、
限られたスペースを最大限に活用したいというニーズに応えることが難しい状況でした。
フリップチップ実装の3つの優位性
これらの課題を解決する技術として注目されているのが、フリップチップ実装です。フリップチップ実装は、チップを反転(フリップ)させて、チップ面に形成されたバンプ(突起状電極)を基板に直接接合する工法で、
従来のワイヤーボンド方式と比較して次のような技術的優位性があります。
○高いスペース効率:チップを反転させて基板に直接接続するため、チップ面全体に接合点を配置でき、限られたスペースを有効活用できます。
○高速動作への対応:直接接続により接続距離が短くなるため、信号の遅延や損失が少なく高速動作に対応できます。
○材料コストの最適化:ワイヤーボンドほど金を使用しないため、材料価格の変動リスクを抑制できます。
近年、フリップチップ実装技術は急速に進化しており、AIサーバーやIoTなど先端半導体パッケージに欠かせない工法となっています。
特にAI半導体分野では演算能力向上のためチップやパッケージのサイズが増大傾向にあり、高密度実装技術の重要性がさらに高まっている状況です。
デンケンのFCBGA技術への取り組み-現在の実力と将来への展望
デンケンの技術力と今後の課題
|
デンケンのフリップチップ実装技術の特徴は、フラックス洗浄、アンダーフィル充填、加圧硬化、レーザー捺印など、すべての付帯工程を社内で保有していることです。 これらのプロセスを使った試作や量産実績は豊富で、このような対応が可能な国内OSAT(半導体組立・テスト)企業はほとんどなく、九州エリアでは唯一デンケンが対応できる状況です。 また、SMD実装からチップ実装、洗浄、アンダーフィル、マーク、パッケージカット、半田ボール搭載まで、モジュールラインの標準工程を確立しており、各工程の連携により品質の安定化と開発期間の短縮を実現しています。 ただ、ワークサイズ・チップサイズの大型対応や、Au-Au接合、チップレット・積層実装(2.5D、3D)、NCP・ACP実装など、市場から求められる先端技術の面では、まだ実現できていない部分もあります。 そこで同事業部では市場の高精度・マルチプロセスの需要に対応するため、新たな設備投資としてフリップチップボンダーの導入計画を進めています。 今後は、従来技法では複数の専用設備が必要だった工程や技術をフリップチップボンダーに統合することで、開発期間の短縮とコスト最適化の両立を目指しています。 これにより、「ワークサイズ・チップサイズの大型対応」「Au-Au接合技術」「チップレット・積層実装(2.5D、3D)技術」「NCP・ACP実装技術」などの先端パッケージ技術分野で、 より高度かつ迅速にサービス提供できる体制の整備を進める計画です。 |
![]() 減圧洗浄装置 ![]() アンダーフィル装置 ![]() 加圧硬化装置 |
まとめ:先端パッケージ技術の拠点として
FCBGA技術をはじめとするフリップチップ実装技術は、AI半導体の高性能化に伴うチップ・パッケージ大型化、チップレット、3Dパッケージなどの先端実装技術として不可欠な技術となっています。
[デンケンのFCBGA・フリップチップ実装技術の強み]
・フリップチップ実装における豊富な技術実績と対応力
・九州では唯一の総合的OSAT対応企業
・モジュールライン標準工程による品質安定化と開発期間短縮
・先端パッケージ技術への積極的な設備投資と技術開発
・フリップチップ実装における豊富な技術実績と対応力
・九州では唯一の総合的OSAT対応企業
・モジュールライン標準工程による品質安定化と開発期間短縮
・先端パッケージ技術への積極的な設備投資と技術開発
デンケンでは、市場のニーズに対応した新たな実装技術環境の取り組みを進めており、高性能化と低消費電力化に向けて複雑化するパッケージ構造に追従できる技術の拡充を図っています。
FCBGA技術や先端パッケージの開発・製造についてご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先 株式会社デンケン エレクトロニクス事業部
お問い合わせフォームよりご連絡ください
| 取材協力 | |
![]() |
株式会社デンケン エレクトロニクス事業部 製品技術部 (左)製品技術課 課長 保木 誠司 氏 (右) 製品技術課 係長 三ヶ尻 龍児 氏 |
| この記事を書いた人 | |
![]() |
ものづくりライター 新開 潤子 製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。 https://office-kiitos.biz/ |






