半導体の不具合原因を特定する「故障解析」とは? 開封技術から断面解析まで一貫対応
半導体製品の開発や試作段階で「思ったように動かない」「電源が落ちる」といった不具合が発生したとき、その原因を突き止める技術が「故障解析」です。半導体メーカーや半導体商社の技術者にとって、製品の信頼性を確保するうえで欠かせないプロセスとなっています。
大分県杵築市にある株式会社デンケン エレクトロニクス事業部では、高度なパッケージ開封技術を武器に、非破壊観察から最終的な原因特定まで、故障解析の全工程を一社で完結できる体制を構築しています。
そこで今回は、同事業部で故障解析業務を担当する国廣さんに、故障解析の手順やデンケンならではの強みについて伺いました。
故障解析が求められる2つのケース
故障解析のニーズは、主に2つのケースで発生します。
ひとつは製品試作の段階で、テスト中に動作不良が見つかったとき。
「思ったように動かない」という事象が発生した場合、回路設計に問題があるのか、半導体部品に不具合があるのかを特定するために解析が必要になります。
もうひとつは、信頼性評価の一環として実施されるケースです。
環境試験や負荷試験を経た製品サンプルに異常が見られた場合、どこにどのような問題が発生したのかを詳しく調べる際に活用されます。
では、ここからは解析のプロセスを詳しく見ていきましょう。
段階的に原因を絞り込む故障解析プロセス
1. 非破壊解析観察で全体像を把握
解析の最初のステップは「非破壊解析観察」です。
これは、製品を壊すことなく内部の状態を確認する方法で、SAT観察(超音波探傷試験)とX線検査の2種類があります。
SAT観察では、超音波を使ってチップと他の部分との間に剥離がないかを調べます。
X線検査では、内部の構造や異物の有無を確認できます。この段階で故障箇所をある程度特定できることもあれば、さらに詳しい調査が必要になるケースもあります。
2. 電気的特性検査で通電状況を確認
非破壊観察の次は、電気的特性検査を行います。
具体的には「I-V測定」と呼ばれる試験を行い、実際に電気が正しく流れているかどうかを確認します。
この試験では、保護回路がグランドとショートしていないか、明らかな故障が発生していないかを、電気的に検証します。
外観では見えない内部の不具合でも、通電状態を調べることで異常を検出できるケースがあります。
3. パッケージ開封で内部チップを露出
続いて、故障解析で重要な工程のひとつ「パッケージ開封」です。
これはモールド樹脂で覆われた部分を特殊な薬品で除去し、内部のシリコンチップを露出させる作業のこと。
実はこの工程にデンケンの強みが詰まっています。
デンケンの故障解析の強み①:開封から解析まで一貫対応
パッケージ開封は高度な技術と広い工場環境が必要な作業で、対応できる企業は限られています。
開封作業を外部に委託する解析会社も多い中、デンケンでは開封から断面観察まですべての工程を社内で実施することができます。
お客様は不具合の可能性のある半導体製品を持ち込むだけで、その後の解析工程をワンストップで進めることができます。
デンケンの故障解析の強み②:回路とワイヤーにダメージを与えないパッケージ開封技術
パッケージ開封で最も難しいのは、内部の回路とワイヤーボンディング(配線)を傷つけずに樹脂だけを除去する作業です。
デンケンではオリジナルの薬品配合により、きれいに開封する技術を確立し、確実な開封による高度な解析を提供しています。
4. OBIRCHと発光解析で故障箇所を絞り込む
さて、パッケージを開封しても故障箇所が目視で確認できない場合には、さらに詳しい解析に進みます。
ここでは「OBIRCH(オバーク)」と「発光解析(エミッション)」という2つの方法で、対象の半導体を観察していきます。
OBIRCH(オバーク):リークパスやショート箇所を特定する
OBIRCHは、「Optical Beam Induced Resistance Change(光ビーム誘起抵抗変化)」の略で、半導体の不良箇所を探す装置です。
サンプルに電圧をかけながらレーザーを照射し、その反応を観察します。ショート(短絡)やオープン(開放)といった電気抵抗の変化を検出することで、リークパスやショート箇所を特定できます。
発光解析(エミッション):電気経路の異常を見極める
発光解析は、実際に製品を動作させた状態で発光させて、回路のどの部分が反応しているかを観察する方法です。
良品と不良品を比較し、発光している場所の違いから問題のあるエリアを特定します。ここで重要なのは、光っている箇所そのものが悪いわけではないという点です。
発光解析では素子の発光を見ているため、「本来光るべき経路が光らない」「光り方に違いがある」といった電気経路の異常パターンから、故障の可能性があるエリアを絞り込んでいきます。

エミッション顕微鏡 Phemos-X を操作する國廣さん
5. チップ剥離解析とFIB断面解析で詳細確認
半導体チップは非常に小さく、内部は何層にも重なった構造になっているので、表面から見ただけでは下層の異常を発見できないケースも少なくありません。
そこで要望があれば、さらに詳細な観察に進んでいきます。
上から順に剥がして観察する「チップ剥離解析」
チップ剥離解析は、チップの上層から順番に剥がしていき、各層の状態を確認する方法です。
ボイドや変形、ゲートピンホールといった不具合を一層ずつ探していきます。「上の層は配線で、実際の素子は一番下にあるので、壊れるのは一番下の層が多いんです。
そこで一層ずつ丁寧に剥がして故障箇所を探します」(国廣さん)
縦に切って内部を見る「FIB断面解析」
FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)は、シリコン試料をミクロン単位でスライスする装置です。
断面を観察することで、内部の欠陥の状態を詳しく調べることができます。
「どういう壊れ方をしているのか見たい」という要望に応じて、剥離解析と断面解析のどちらで進めるかを相談しながら決めていきます。
6. FIB回路修正にも対応
回路修正は、開封したサンプルの配線を一時的に別の経路にて繋ぎ直す技術。
製品として動作する状態のまま修正作業ができるため、設計段階での不具合を検証する際に有用なケースがあり、ご要望を頂ければ対応可能とのことです。
現状に応じた最適な解析メニューを提案
このようにデンケンの故障解析サービスでは、半導体の現状と顧客の要望にあわせて最適な解析メニューを提案しながら対応しています。
例えば、回路の図面がある場合はOBIRCHやエミッションの結果からある程度の原因を推測できるため、この段階で解析終了となるケースが多いとのこと。
ただ、さらに詳しく剥離解析や断面解析まで求められることも多いので、國廣さんは状況に応じて対応可能な範囲を提案しながら対応しているということでした。
まとめ
この記事では、株式会社デンケン エレクトロニクス事業部で実施している半導体故障解析サービスについて、解析の手順とデンケンならではの強みを紹介しました。
[デンケンの半導体故障解析サービスの特長]
・パッケージ開封から解析まで、一社で完結できる一貫対応体制
・回路やワイヤーにダメージを与えない高度な開封技術
・OBIRCH・発光解析による効率的な故障箇所の絞り込み
・お客様の現状に応じた柔軟な解析メニューの提案
・パッケージ開封から解析まで、一社で完結できる一貫対応体制
・回路やワイヤーにダメージを与えない高度な開封技術
・OBIRCH・発光解析による効率的な故障箇所の絞り込み
・お客様の現状に応じた柔軟な解析メニューの提案
半導体製品の開発や試作段階で不具合が発生した際、または信頼性試験後の評価が必要な際は、ぜひデンケンにご相談ください。
状況に応じた最適な解析メニューをご提案いたします。
お問い合わせ先 株式会社デンケン エレクトロニクス事業部
お問い合わせフォームよりご連絡ください
| 取材協力 | |
![]() |
株式会社デンケン エレクトロニクス事業部 評価解析部 評価解析課 係長 國廣 紗央 氏 |
| この記事を書いた人 | |
![]() |
ものづくりライター 新開 潤子 製造業専門で執筆活動を行う「ものづくりライター」。ものづくりについて広く知識を持ち、ものづくり技術を言葉で表現して伝える活動を、愛知県を拠点に展開中。 https://office-kiitos.biz/ |



